猫の全身麻酔は危険…ということを見聞きした人は多いでしょう。
実際、全身麻酔によって亡くなってしまう猫もおり、できれば全身麻酔はしたくない!という声もよく耳にしますね。
しかし、避妊・去勢手術をはじめ、治療のために必要な処置によっては全身麻酔が必要となることも。
危険とされているのに、なぜ全身麻酔が必要なのでしょうか。また、どんな副作用があって死亡率はどれくらいなのか、猫の全身麻酔について正しく理解しておきましょう。
猫の全身麻酔の必要性
猫の全身麻酔にリスクがあるのは事実で、獣医師もむやみやたらに全身麻酔をかけることはありません。
しかし、全身麻酔をかけたほうがその猫のためになると判断した場合には全身麻酔を使用します。それは、どんなことなのでしょうか。
処置を確実に安全に行うために
全身麻酔が必要となる処置は、下記の処置などが挙げられます。
- 避妊・去勢手術
- 歯石除去・抜歯などの口腔内処置
- CT検査やMRI検査
- 外科手術
- 放射線治療や透析治療
そもそも、猫は人間のように息を止めたり、同じ姿勢でずっと待つ…なんてことはできません。
適切な処置を「確実・安全」に行うためにも、猫に全身麻酔をかける必要があります。
猫に痛みやストレスを感じさせないために
猫に動いてほしくない検査や治療にも使用される全身麻酔ですが、多くは痛みを伴う処置に使用されます。
『病院』を理解できない猫にとって、何をされるかわからない不安や恐怖といったストレスや、痛みを感じさせないためにも全身麻酔は必要です。
人間でも歯を抜くときは部分麻酔を注射されたり、手術のときは全身麻酔を使用しますね。それと同じことなのです。
何か大きい手術をする時に麻酔無しと考えるとゾッとしますよね・・・。
猫の全身麻酔の副作用は?
猫の全身麻酔の副作用にはどんなものがあるのでしょうか。
嘔吐してしまう
緊急手術となる場合を除き、全身麻酔が必要な処置を受ける前には、「12時間前からの絶食と3~6時間前からの絶水」を獣医師から指示されます。
これは、全身麻酔をかけると消化管機能の低下により、胃の内容物が逆流しやすく誤嚥性肺炎や喉や気管に詰まって窒息してしまうことを防ぐためです。
しかし、これ以外にも全身麻酔から覚めたあとに嘔吐をしてしまうこともあります。これは人間でも起こることですが、原因ははっきりと解明されていません。
肝機能障害や腎不全など臓器への影響
猫の全身麻酔に限りませんが、全身麻酔に使用される薬は肝臓や腎臓で分解され、尿となって排出されます。
どうしても肝臓や腎臓に負担がかかってしまうため、全身麻酔をしたあとに肝臓や腎臓、場合によっては心臓が悪くなるということも。
全身麻酔の事前に行う術前検査でそのリスクは回避されるため、そういったことはほとんどありませんが、まれにそういうこともあるということは覚えておきましょう。
後遺症
全身麻酔による後遺症もごくまれにある事も事実です。
その猫によってどんな後遺症がでるかは予測ができませんが、下記のような後遺症例が報告されています。
- てんかん発作
- アレルギー
- 不整脈
- 肺血栓症
- 目の障害
健康な猫であれば心配はありませんが、もともとてんかん発作を持っていたり、アレルギー体質の猫は注意が必要です。
麻酔は身体全体の機能を強制的にシャットダウンさせるほどの薬物です。だから不安なんですよね。
猫の全身麻酔の死亡率は?
人間でも全身麻酔によって命を落とすことがありますが、猫の全身麻酔の死亡率とはどれくらいなのでしょう。
死亡率
健康状態が良好な猫の場合、麻酔関連の死亡率は0.11%で、全身麻酔関連では0.26%とされています。
健康状態が悪い猫では、麻酔関連の死亡率は1.4%と比較的に上昇してしまう傾向にあるようです。
これは、約1000頭に1頭~2頭の割合ですが、人間では15万人に1人の割合であることを考えれば、少なくはない数字と言えるでしょう。
緊急手術なども含まれているため実際にはもっと低い
全身麻酔で1000頭に1頭の猫が亡くなっていると聞くと、ますます危険に思えて不安になってしまうかもしれません。
しかし、この数字には救急医療や高度医療手術による死亡率も含まれています。
通常であれば絶対に全身麻酔をかけられないと判断された猫が、緊急手術によってやむを得ず全身麻酔をかけるということも少なくありません。
そういった緊急時以外では全身麻酔で死亡するリスクは相対的に低くなり、「町医者」と呼ばれる普段通う動物病院では全身麻酔で亡くなる猫はほとんどいないのが現状です。
実際に手術が必要な状況を考えると、数値としての死亡率はかなり低いと言えるのではないでしょうか?
まとめ|全身麻酔は必要以上に怖がらないで!
猫の全身麻酔は危険が伴うことは事実です。しかし、それは獣医師もよく理解しており、常に細心の注意を払って全身麻酔に取り組みます。
愛猫に全身麻酔をかけることを不安に思う気持ちはよくわかりますが、必要以上に怖がる必要はありません。
猫に全身麻酔が必要となったときに飼い主は決断の選択を迫られますが、獣医師とよく相談して、『全身麻酔のリスクと処置をしないリスクのどちらが問題か』を愛猫のためにしっかり考えてあげましょう。